EXHIBITION SPACE A

展示室A

展示室A

The Kiyotsukyo Gorge Tunnel connects
清津峡渓谷トンネルが繋げるもの

清津峡渓谷歩道

Closure of the boardwalk and construction of a trail tunnel
遊歩道の閉鎖と観光歩道トンネルの建設

黒部峡谷(富山県)、大杉谷(三重県)とともに日本三大峡谷の一つに数えられる「清津峡」。豪雪地である十日町市の激しい雪解け水がつくりだすエメラルドグリーンの川の流れと、柱状節理と呼ばれる大峡谷の両壁は、強い四季の変化と共に、地域独特の美しい自然景観を作り出してきました。
清津峡は、1949年には上信越高原国立公園の一部として指定され、同時に清津峡温泉街も整備されて、清津川沿いの遊歩道を通り、この地の自然を楽しむ人は徐々に多くなっていきました。しかし、1988年に遊歩道で落石事故が起き、通行は禁止となりました。
その後、どうにかこの地域の独特な自然景観である柱状節理の渓谷の風景を楽しめるようにとの思いから、1996年に清津峡渓谷トンネルが開坑され、以来多くの観光客がこのトンネルから、清津峡の風景と柱状節理の岩肌を眺めることができるようになりました。

清津峡渓谷歩道トンネル全体図

Planing
全体計画

オープン当時には多くの観光客で賑わった清津峡渓谷歩道トンネルでしたが、徐々に観光客は減少し、2017年の統計では年間で6万人程度となりました。
十日町市は、トンネルを利用してこの地域の魅力をより多くの人に体験してもらうため、大地の芸術祭2018の一環として、①エントランス施設の新築、②トンネル内部に公共トイレを設置、③パノラマステーションのリノベーションを行うこととし、アートフロントギャラリーがMAD Architectsに大地の芸術祭2018への参加を要請し、プロジェクトが始動しました。
MAD Architectsは、リニューアルの要望を受け、エントランス施設及びトンネル内部全体を屋外の自然との新しい関係性において感じ取ることができる空間へと変換し、この地域の自然や地形の持つ力を訪問者にダイレクトに体感してもらうことを設計のコンセプトとしました。
清津峡は国の名勝天然記念物に指定されており、上信越高原国立公園内にも位置していることから、環境省・文化庁による様々な規制がありましたが、大地の芸術祭のプログラムとして設計は進められました。同時に、清津峡地域の住民に対してリノベーションの意義や設計について説明会を開催し、地域との共通認識を構築しながらプロジェクトは進められてきました。

Tunnel of Light

Tunnel of Light

清津峡渓谷歩道トンネルは、2018年の大地の芸術祭でアート作品として改修されました。自然の「5大要素」(木、土、金属、火、水)を利用しながら、建築的な空間とアーティスティックな雰囲気をつくりだし、この歴史あるトンネルを変容させました。人間と自然の関係をあらためて考え、地元の人々、来訪者双方をこの土地の圧倒的な美しさに再びつなげることを企図しています。
5色の色は、それぞれの見晴らし所と入口に関連した色となっており、各見晴らし所へ到達する気持ちを高める効果をもたらすことを企図しています。

Periscope
ペリスコープ

来訪者は2階の足湯に足を浸すことで、この地域の大地の恵みを感じながら、直接に外を見ることはできなくとも、内部に流れ込んでくる風や音によって周囲の自然を感じつつ、上部に反転して流れる清津川の映像を見ながら、トンネル全体の体験をスタートすることができます。

馬岩松 Ma Yansong

Design by MAD Architects
馬岩松 Ma Yansong

馬岩松は、1975年、中国生まれ(在住)。MADアーキテクツの創設者として、建築を通して社会、都市、環境の新しいバランスを生み出すというビジョンのもと、様々なスケールのデザインをリードしています。
MAD Architectsは2004年に中国出身の建築家、マ・ヤンソンによって設立され、ダン・チュン(中国人)と早野洋介(日本人)の3名によって運営される建築事務所です。