大地の芸術祭の里
清津峡の作品紹介
マ・ヤンソン/MADアーキテクツ「Tunnel of Light」
2018年には、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」の作品として、
中国の建築事務所・MADアーキテクツの設計によりトンネル全体をリニューアル。
トンネル内部と新たに設置したエントランス施設のいくつかのポイントに、
自然の「5大要素」(木、土、金属、火、水)をモチーフにした建築的な空間とアーティスティックな雰囲気がつくりだされ、トンネル全体が生まれ変わりました。
MADアーキテクツは、人間と自然の関係をあらためて考え、
地元の人々、来訪者双方を土地の圧倒的な美しさに再びつなげることを企図したのです。
“ペリスコープ(潜望鏡)” (木)
トンネルへのアプローチに、小さな木の「小屋」が建っている。
1階はカフェとお土産店(地元の工芸品もある)。2階の杉の傾斜した屋根の内部には足湯がある。
天井にあいた円状の開口部―ペリスコープ(潜望鏡)が屋根に向って開かれている。周囲の景色を映す鏡状のレンズに囲まれ、来訪者は、足湯につかり、くつろぎながら、木の室内の温かさに包まれ、つかのま、屋外の自然の風景を楽しむ機会を与えられる。
“色の表出” (土)
トンネルの入口はかつての栄華を取り戻し、新しく改修された通路へとつながっていく。
異なる色の光をトンネルの見晴所毎に展開させた。空間の活気を〝色の表出″としてとらえ、ミステリアスな音楽と組み合わせることで、微細だがダイナミックな環境をつくりだし、トンネルを歩く人たちに未知なるものへの好奇心をかきたてる。
“見えない泡” (金属)
第2見晴所の改修では、"見えない泡"が施された。
異世界から降りてきたような、カプセル状の構造がトンネルのシルエットを柔らかに映し出し、周囲の風景を反射する。
トイレの峡谷に向った壁は透明である。外の窓はメタル上のフィルムで覆われているので、内部からしか見えないようになっており、パブリックとプライベートの観念の遊びを試みている。
そこは、静かな逃避所、孤独な場所、パブリックな場にいながら、親密な場所でもあるのだ。誰も自分たちのことを見ていないと思っている時に、人はどう反応するのか――そんなことを考えながら、沈思黙考できる理想的な一角である。
“しずく” (火)
‘露のしずく’が第3見晴所の湾曲した壁に散りばめられた。
“しずく”は、不確かな窓のように、反射する開口部の連なりである。
自然環境を映しこみながら、現実を投射し、また、水の分子のように超現実的に見える泡が、天井や壁から宙に落ち、時間のなかで凍結する。
火のような赤いバックライトで照らされた凸面鏡を覗き込むと、 自然とのもうひとつのつながり――ミステリアスでありながら、あたたかな――を体験することができる。
“ライトケーブ(光の洞窟)” (水)
今回の改修の頂点は、"ライトケーブ″で表現される。
半鏡面仕上げのステンレススチールがトンネルをなぞり、傑出した岩の形、目に鮮やかな緑、秘蔵の大地から湧き出る青緑色の水を、閉じられた空間に引き込む。
浅いプールの水はそよ風に柔らかな波紋を描く。洞窟に映し出される峡谷のイメージは水の上にも投射され、自然の無限のイリュージョン(幻影)が生み出される。
“ライトケーブ”は、軽さと静謐さの両方を、暗く湿っぽかったトンネルにもたらし、思いもよらぬ方法で、訪れた人々を自然のなかにたたずませることを可能にした。
Tunnel of Light
越後妻有、日本
2018
Tunnel of Light
Echigo-Tsumari, Japan
2018
設計チーム:馬岩松、早野洋介、党群、フジノヒロキ、ミヤモトカズシ、イシガミユキ
Design Team: Ma Yansong, Yosuke Hayano, Dang Qun, Hiroki Fujino, Kazushi Miyamoto, Yuki Ishigami
実施設計:グリーンシグマ
Executive Architect: Green sigma Co., Ltd